温厚なナガオが唯一毒をはくのが、チーム内でのポジションの話。FW、MF、とさまざまなポジションを経験して、最終的にCBに収まってしまったナガオにはかかえきれないほどの鬱屈とした思いがあるらしい。小学生時代の最後にCBで体をはっているナガオを「おそらく本意ではないが、それなりにモチベーションがあるのだろう」と楽観視していた私はやはり少し甘かったようだ。その頃からナガオにはチームへの不満が山積し、口には出さないながらも移籍したいくらいに思うところがあったようだった。
小学校を卒業する前、監督に言われたことをよく覚えている。
「ナガオの悪いところはそこそこすべてのポジションが出来るところ。つまりいいようにコーチに使われてしまうから本人は辛いんだろうな。」
ナガオは一貫してボランチでのプレーを希望していたけれど、どこかに穴があればそこに充当されることが本当に多かった。さすがにGKはやらなかったけれど・・
中学にあがり、クラブチームでプレーするようになったナガオは毎日のように「ボランチでやる」と言っていた。が、練習試合や公式戦も見る限り、ほとんどCB。MFで招集されたはずのトレセンでもDFでの起用が多い。
キミよりたよりになるDFがいないのだから仕方ないよ、という母の言葉に凶悪な顔で「トヨとかレイの方がCBには向いている。ゼンより俺のほうがボランチとして機能する。」と答えるナガオを見て・・母はどうすりゃいいんじゃ?と真剣に悩んでしまった。
ナガオは何度もコーチに意見を言い、希望を伝え、回答を求めているのにコーチの返答は「うるさい」あるいは「CBがボランチできるはずがないだろう」とのことだったらしい。
私はサッカーチームに所属した経験がないのでよくわからないけど、伝え聞く話では監督やコーチの一言は天の声のごとくひたすら受け入れるのがクラブチームというものらしいのだが・・・ナガオの意見はちょっと違った。
「オレはボランチをやる。」
???っと思う母に、やはり凶悪な顔で「ボランチをやる。みんなわかってくれる。オレの方が正しい。」
へぇ、実力行使に出るんだ、とちょっと驚いた。冷静で物わかりのいい子だとけど確かに誰よりも勝ちにこだわるタイプではあった。でもさ、それやると次から試合に出してもらえないよ。。
試合中に勝手にポジションチェンジしたことは以前にも確かにあった。その時はコーチの怒声に恐れをなしてすぐ元のポジションに戻ったよねぇ。次の試合でまたあれやる気なのかな・・
CBは責任重大な面白いポジションだと思うのだけど・・・ナガオはどうしてもボランチにこだわってる。