「言わぬ」と決めて以来、ツグオの様子をじめっと観察している私。母からの小言がなくなった分、ツグオはのびのびとスマホゲームに明け暮れ、ウォーキングデッドを最新話まで制覇するという、きわめて非生産的な生活を続けている。豪雨災害の被災地となった実家に「うちに一匹労働力が余っていますので、そちらで泥かきでも荷物運びでもこき使って下さい」と連絡したところ「ボランティアの受け入れは高校生以上なので要りません」と拒否られた。体格だけなら高校生並みなんですけどねえ。
この調子ではまた無為に夏休みを過ごしてしまう、どうしようと考えていたところ、某学習塾の広告が目にとまった。なんと「成績保証」をうたっているではないか。定期試験が60点以下の生徒は20点アップを保証するとのこと。もし、結果がでなければ授業料が無料になると書いてある！
とりあえず夏期講習から始めれば夏休み中のノープラン勉強も少しはプランされるに違いない。とにかく私の代わりに口出しをしてくれる人が欲しい。（そして私の代わりにツグオに噛みつかれる人が欲しい。）しかも彼の場合、定期試験の点数がが20点もアップするはずがないので授業料は永遠に無料だし。
届いた資料をツグオにみせて、「とりあえず、体験だけでも行ってみようよ。20点アップ保証だって。無理だよね、絶対～。」とあおってみると20点のキーワードにやはりツグオもひっかかったようで、どんな内容なのかしらと資料をちらちらみていた。友人の子供たちの評判は悪くない塾だったのでツグオさえその気になれば即通塾だ！
と、思っていたら・・。
先方から夏期講習の無料案内があり、是非保護者の方とお話がしたいというので電話で来校の調整をしていたところ途、途中から雲行きが怪しくなった。使用している教科書名を聞かれ、「どの教科書を使っているとか関係あるのでしょうか？」と尋ねたところ、教科書によっては対応できかねる、と宣う。数学は当然のごとく「対応しかねる」教科書で（検定教科書でいうところの高校範囲が入っている）、英語は教科書は対応しそうだったけれど、学校の授業が「対応しかねる」内容ということで結局入塾を拒否されてしまった。学校の授業なんて知らないだろうにと母は思ったが、ここでねじ込んでみてもよい結果にはならないだろう。
というわけで授業料無料で塾に通う計画はあえなくとん挫してしまった。ツグオに顛末を話したら、20点アップするわけないし、第一塾なんて通わねーし、と高らかに宣言された。塾は通わなくていいけど、定期テストの点数は20点といわずアップしてもらわないと本気でまずいんですけどね。
母の代わりにツグオに目を光らせ、母の代わりに噛みつかれる係はいまだみつからず。
